石澤典夫さんの、重心が降りて余計な力の抜けた声は、より美声を際立たせる……インタビューの編集をしながら先日そんなことを思っていた時、思い出した……
時々、講座をやり始めたころの、この出来事が頭をよぎる。
世界で一つしかない自分の声は、取り換えることはできない。ブレス&ヴォイスで数えきれない多くの人たちに出会ってきた。呼吸が浅い気がする、音域が狭い、声量がない、など声と呼吸の悩みを勿論お聞きしますが、その、ある時、とてもショックな言葉をきいた。「自分の声が嫌いなのです」という……。どなたかに傷をつけられるようなことを言われたのかしら……私は「はぁ……ぁそうですか……」と答えた。今ならもう少し気の利いた返答ができたかもしれない。  よく、特に女性同士が、もっと鼻が高かったらなー、もっと目がぱっちりとていたらなー、というつぶやきをお互いにしますが、「自分の声が嫌い」という感覚は理解できなかった。
その方は講座に参加してくださり、我慢強く取り組まれた。
ある時、「おはようございます」といった時に「わっ、何かいいことありました?」と言われたと、嬉しそうに報告してくださった。周りの方に、「ご機嫌な声」と捉えられたのですね。それからその方は、声が自分をご機嫌に、周りをご機嫌にしていける!という意識になられたそうです。嬉しい思い出です。今あの方はどうしておられるかしら……声の力は、すごいですね☆PC254063